2007年7月18日水曜日

地球大学vol.57「“海の森”魚のゆりかご・海藻の再生にむけて」

シリーズ「海洋」Ⅱ:第3回
“海の森”魚のゆりかご・海藻の再生にむけて
講師 山本光夫さん(東京大学 大学院工学系研究科)渋谷正信さん(水中塾主宰・渋谷潜水工業代表)

・日本中、そして世界中でいま“海の森”はどうなっているのか
・海藻が海洋生態系に果たす役割
・“陸の森”と“海の森”のつながり
・“磯焼け”のメカニズム
・ウニと海藻、地球温暖化の影響下で起こりつつある生態系の波乱

陸上で暮らす人間、地球環境問題に敏感なこの頃、森が気になる、植樹、大切。アマゾンのジャングルでは毎日、京都盆地と同じ大きさの森が消失している。Google Earthで見ようと思えば見える、可視化される世界の森の惨状。

陸上の森の状況に対して、私たちは海の中の世界で、今どういったことが起こっているのか、ほとんど知らない。じつは、日本で、世界の海で、海の砂漠化が進行している。陸上の森が消失しているように、海の森が消えている、海藻が失われている。あちゃぁ。

■磯焼け(海の砂漠化)
海藻(コンブとか)の群落-藻場が、著しく衰退、または減少している。
日本、世界各地で発生。
藻場の減少は、海の生態系(魚や貝)に影響を及ぼす。
人間の営み、漁村部の過疎化。





■磯焼けの原因
自然現象(台風、時化)
潮流変化による水温上昇
Feイオンの不足
ウニを代表とする藻食動物
栄養塩の不足
などがあげられるが、地域によって原因は異なり、複合要因のため特定できていない

■海洋の生物生産を支える鉄 フルボ酸鉄
森林では落ち葉が腐葉土になるとき、フルボ酸というものができる。雨が降ると土中にある鉄は水に溶けイオン化し、フルボ酸と結びついてフルボ酸鉄に。フルボ酸鉄は、植物が取りこむことができる鉄であり、海へと流れていく。
藻類にとって、鉄は必須微量金属元素の一つであり、植物プランクトンの光合成系や呼吸系における電子伝達、クロロフィルの生合成、硝酸及び亜硝酸の還元などに深く関与しており、藻類増殖に不可欠な元素である。しかしながら、藻類による鉄の摂取機構については、いまだよくわかっていないのが現状である。
河川の護岸、ダム、取水堰、海岸の護岸などによって、森の栄養分が海に届かなくなっている。

■藻場の消失、生態系の危機
樹木の消失=森の生態系の消失と同じ
藻場の消失=海の森の生態系の消失 魚、産卵できない

■磯焼けした場所への施肥
海岸に穴を掘って、人工的に生成したフルボ酸鉄を施肥し、(畑、農業のように)藻場の再生実験が行われている。
北海道増毛町舎熊の事例。
20~30年間の間、コンブの消えた海に施肥。8ヶ月でコンブ再生。3年後も順調にコンブの森が成長し続けている。


世界中で陸上の森が消えている。
内陸部での砂漠化が進行している。
可視化され、認知された環境問題。
それでもなお、消え続けている。

世界中の海で海藻の森が消えている。
海の中の炭素循環は、温暖化の抑制を担う重要な機能。
陸上の生物である人間は、海の中で何が起こっているのかは、なかなか見えない。

日本人は、古来から自然を里山、水田と人工的にうまく利用してきた。
それが、里山の放置、河川の護岸、ダム、取水堰の建設がもたらしたもの、海の森の危機。
現代の文脈の中で、新たに再生しなければならない課題の多さに、驚愕。あちゃぁ。

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