2007年7月4日水曜日

地球大学vol.55「サンゴは地球の警報機」佐藤哲

シリーズ「海洋」Ⅱ:第1回
サンゴは地球の警報機


■講師 佐藤 哲 氏 (長野大学環境ツーリズム学部教授、元WWFサンゴ礁保護研究センター長)
生態学者。東アフリカの湖で魚の研究をするかたわら、発展途上国の貧困について知る。
環境問題は地域経済をも考えて取り組む必要があることを知る。


■講義内容

・サンゴ礁の減少問題は、CO2の吸収が減り、地球温暖化を加速させるという側面だけの問題だけではない


・地球環境問題の解決は、グローバルとローカルの2つを融合させなければならない

グローバル…地球規模での解決策、当然利害が絡む、意思決定の遅延
ローカル…地域社会主体のボトムアップの取り組みが不可欠


・サンゴ礁の衰退

サンゴ礁とは、造礁サンゴという生物がつくる地形
サンゴ礁は熱帯雨林とならんで、生物が多様である
世界のサンゴ礁、約58%が危機的状況
数値にばかりとらわれてはいけない
いろんな原因が複合的に絡みあっているから、それをひとつひとつ地道に調べる


・サンゴを脅かすもの

自然現象(台風)
人為的な影響 陸域からの汚染(開発土壌の流出、生活排水、赤土、農薬、畜舎排水と富栄養化)
観光による影響 シュノーケリング(1000人で一気にサンゴ礁をシュノーケリングしたらどうなる?)
水温上昇(温暖化)による白化
2~3度気温上昇でサンゴ礁のほとんどが白化


・サンゴの白化とは

海水温上昇による、褐虫藻の離脱
石垣シラホの場合、30度以上の海水温がつづくと、サンゴは死滅崩壊
他の要因が良ければ、元気の良いサンゴは死なない
台風、昔からある、2004年の台風で石垣の枝状のサンゴがたくさんやられた
台風でやられるくらい、他の要因で弱っていたと思われる、原因はわからない


・サンゴと人のかかわりあい<石垣島>

建材
魚湧く海
いのちつぎの海
誇りと愛着
苦しい時に生活を支えてくれた海の記憶
歌、祭事、多様な利用
共有財産としての海


・忘れ去られたサンゴの価値

世代間での海の記憶の断絶
サンゴの海へのありがたみが失われるとともに、自然環境の悪化が進む
世界中で同じことが起こる、すなわち地域社会の文化の壊滅と自然環境の悪化


・サンゴ礁の保全と地域社会のボトムアップ

サンゴ礁を誰が守るのか?
国際社会か?
国か?
いや地域社会だ!
土着的知識と伝統的資源の利用
科学的知識や外来の制度の受容と活用
サンゴ礁に関わる文化を再興、継承することで地域住民の誇りと愛着を強化
地域住民のサンゴ礁に対する誇りと愛着の再定着化
経済的インセンティブ、価値創出


・世界各地の地域社会と失われた自然、文化の復興

わたしたちにできること
好きな地域をつくる
地域の動きに注目、人々の気持ちをよく理解する
特産品を買う
遊びに行く
一緒にできることに参加する


・人間が適度に介入し共存する形での自然、人間を含みこんだ生態系のバランス

文化
人の思いを尊重しよう


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地球環境問題は、グローバルな対応と、ローカルな対応を融合させて進めていかなければならない。そのためには、科学的、政治的な側面をよく学び理解する一方で、自然とのかかわりをもつ地域において、断絶された文化や知恵を先人たちの記憶から呼び覚まし、経済的にも存続可能なよう地域社会を再興していくことが大切だと思った。

京都議定書についても、第一線の生態学者から発せられる貴重な意見が聞けた。京都議定書は、国連気候変動枠組条約、地球環境問題に対して、世界の主要国が合意し、ようやくグラウンドデザインができたことに大きな意義がある。70年代頃に起こった環境問題ブームの頃には、そんなことはできなかった。アメリカが批准したからといって、その面だけをとらえて悲観してはいけない。この議定書は、温暖化に対して、先進国が責任をもつといったことを取り決めてもいる。もちろん、課題はたくさんあるが、とても勇気が湧いた。

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