地球大学vol.56「レジームシフト イワシの増減と地球の気候リズム」渡邊良朗
シリーズ「海洋」Ⅱ:第2回
レジームシフト イワシの増減と地球の気候リズム
講師 渡辺良朗さん(東京大学 海洋研究所 教授)
イワシがたくさん獲れる年と、ぜんぜん獲れない年がある。
何でだろう?
乱獲?
もちろん、それもあるが、
じつは、最近、気候変動とイワシの数の変化が関係していることがわかってきた。
まず、そのイワシや魚の暮らす海についてちょっと勉強。
海の基礎知識。
地球の表面積 5憶k㎡
海洋の表面積 3.6憶k㎡(地球の72%)
太平洋 1.7憶k㎡
大西洋 8千万k㎡
インド洋 7千万k㎡
海洋の平均水深 3700m(富士山がすっぽり入る)
海中に届く光の深さは100m前後
海中で植物が光合成できる深さは20~30m前後
地球の7割の海で、海洋植物が光合成をしたり、普通の魚が生活する場は、海全体のほんの一部にしかすぎない。海は、ほとんどが深海で深海魚たちの世界。1970年ころまでは、地球上の生命はすべて太陽のエネルギーなしでは存在できないと考えられていたが、まったく光のとどかないところで、深海魚が、湧き出る硫化水素を糧に生きていることが発見され、海の生き物の神秘が明かされた。
海に生きる魚類の生態について少し。
魚類の種類は、約2万8千種といわれている。(わかっているだけ、今後もっと増えるだろう)
魚の卵、成魚、産卵のおおよそのデータ
卵の直径 成魚 産卵数
マイワシ 1.5mm 23cm 3万
ニシン 1.6mm 35cm 8万
ブリ 1.2mm 100cm 100万
マグロ 1.0mm 300cm 1000万
哺乳類は、ふつう、身体が大きさに応じて、卵もおおきくなる。
魚、身体が大きいほうが、卵小さい。
そして、小さい卵で、たくさん産む。
が、1万個産んで1匹の成魚になるかならないかの世界。
また、カツオの例を見ると、稚魚のうちから、成魚になるまで共食いを繰り返す。
魚にとって、自分たちの卵は、自分たちの栄養分になっているのだ。
で、本題。
イワシの増減と気候変動について。
太平洋には、大きく分けてイワシが3ついる。
①カリフォルニア沖のイワシ
②チリ沖のイワシ
③日本の親潮と黒潮がぶつかり合うところのイワシ
この3つのイワシの大漁、不漁の時期が見事に重なっている。
原因は気候変動だとわかってきた。
1900年代にイワシがよくとれた時期は、
で、
海水温度が影響している。
しかも、この増減の幅は半端じゃない。
イワシは、昔から漁師の間では、
「イワシとドロボウは忘れた頃にやってくる」
と言われてる。たしかにその通りである。
イワシがたくさん獲れる、獲れないは、アリューシャン低気圧といわれるものに影響され、親潮の温度が低いと、温かくなったときに深海の栄養分が表層に向けて循環するため、その栄養を得たイワシがたくさん育つ、親潮の温度が高いと、温度差がなく循環も起こらないため、イワシも育たない。イワシに限らず、日本の太平洋沖の豊かな漁場はこの親潮のメカニズムと、黒潮とのぶつかり合いの成せるわざ。というのが、まぁ、かんたんですがイワシの資源変動と気候変動の関係なのである。
で、このことがわかったのがやっと最近。
だけど、1930年代のころは、イワシいくらとっても全部とってしまうまでの技術はなかったが、現代の技術では、ごっそりとってしまう。グラフ見ればわかるように。
ここまでわかっているのに、漁業は自分たちの生活のために、とってしまう。
温暖化で海面の温度があがったら、おそらくもっと違う影響がでるはず。
気候変動がわかるんだから、それにあわせた漁業をやっていかないといけない。
獲れない時はとらない、そして、獲れない時に漁師さんのくらしを支えられる仕組みをつくる。そういうことしなければ、イワシ、やばいかも。
人間は、陸の生きもので陸のことばっか考えてきたから、海のことまだまだ知らない。けど、食べたいし、儲けたいから獲る。農業や牧畜の考え方を海に置き換えても、海はまったく別物だから、通用しないわけ。養殖養殖って言うけど、漁獲量の5%にも満たないとのこと。自分たちで何かできると思ったら大間違い。しかし資源が豊富なのは事実。こんなけ人間いるし、貴重な場所だから、きちんとお付き合いするため、もっと海について知らなければならないんだろうな。けど、ロケット一発飛ばすのに300億の予算つかって、海洋研究にあてられる予算は、それ以下の微々たるものなんだって。宇宙から地球を見ることでわかることも多いだろうけど、地球の70%もある海のことも全然わからんのに、そりゃないでしょってね。
※ここでいうイワシはマイワシのこと。
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