2007年12月5日水曜日

宮本常一/民俗学の旅



「忘れられた日本人」に続いて、宮本常一の「民俗学の旅」を読んだ。

宮本氏が、どうして民俗学の道を歩むことになったかということが、自分自身の故郷のことや、生い立ちから書かれている。
民俗学に対する考え方もよく書かれているが、世の中の捉え方、関わり方がいろいろ述べられていて興味深かった。とくに第二次大戦前後の物資や食料の乏しい時代に、宮本氏がもともと農民の生まれであり、各地を自分の足で歩き回った経験を元に、農民を、世の中を救おうと奔走する様は、学者とは思えない暖かい人物像が伝わってきてとても感銘をうけた。宮本氏は、金持ちの生まれでもないし、自らを百姓だと名乗る人。スゴイ民俗学者だけど、本当に本物だと思う。
また、「忘れられた日本人」で語られていた、私の祖父につづき、父母のことが書かれていた。家を出る息子に贈る父親の言葉や、慈愛あふれる母の姿が印象深く、宮本氏を形成している要素として、祖父やこの両親の影響がまたまたよくわかった。
また、現代社会における地域社会の問題にも、戦後まもない頃からいちはやく目を向けられていて、中央集権的な日本社会の行く末を見事に予知されている辺りも、鋭い感覚を持ってられたんだなと改めて思った。

その他にも、宮本氏が歩んだ歴史をつぶさに知ることができ、庶民の人との関わりを通して彼の語る言葉、視点の感慨深さをよく知ることができる好著であると思う。

まだまだ著作があるので、これからどんどん読んでいこうと思うが、読めば読むほど、失われた庶民の暮らしを思い、寂しくなるだろう。けど、懐古主義に陥るのではなく、宮本氏が消え行き忘れ去られないよう残してくれた著作の中から、しっかりと日本人の姿をとらえ、自分の生きる時代に少しでも反映していければと思う。

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